読者の悩みをリサーチするときは、最初から細かな人物像を作り込む必要はありません。公開されている質問やレビューから「何をしたいのに、どこで止まっているか」を拾い、出典と自分の解釈を分けて残してください。
例えば「写真整理ができない」という言葉でも、旅行写真を家族へ送りたい人と、スマホの容量を空けたい人では、必要な答えが変わります。この違いを先に見つければ、記事を書き始めてから何でも詰め込む迷いを減らせます。
今回は、調べる場所、記録する列、3つの声を一つの記事へ混ぜない判断を、説明用の架空例と調査シートで示します。架空例は、実際のレビューや市場需要の調査結果ではありません。
タイトル・目次の約束と、利用者の声を分けて集める
僕はコンテンツライティングの教材で、競合のタイトル、目次、レビューを見る方法を解説しています。特に、タイトルや目次は売り手が示した約束、レビューは利用者が受け取ったことや残った疑問、という違いが大切です。
「初心者でも簡単」という販売文だけでは、どこで困った人がいるかまでは分かりません。レビューに「操作名が分からなかった」とあれば、用語の説明を確かめる手掛かりになります。ただし、1人の感想を全員の悩みにしてはいけません。
例えば光文社ドクチョー総研は、編集者が読者の日常や悩みを聞く定性調査と、アンケートによる定量調査を組み合わせる考え方を公開しています。個別の声から見つけた気づきと、どの程度の人に当てはまるかを確かめる調査は、役割が違います。
あなたが一人で始める場合も、まず声の文脈を残し、広く当てはまるかは別に確かめると整理できます。調べる場所は、次のように役割を分けます。
| 調べる場所 | 拾える材料 | 追加で確かめること |
|---|---|---|
| 競合記事・商品タイトル・目次 | 誰へ何を約束しているか | 実際の本文で答えているか |
| 公開レビュー | 使えたこと、残った不満、条件 | 対象商品や利用時期が合うか |
| 公開Q&A・コメント | 困った場面、試した方法、質問 | 回答後に解決したか、未確認か |
| 検索結果の関連質問・関連語 | 周辺にどんな問いがあるか | 誰の声か分からないため、需要の仮説として扱う |
高評価は満たされたこと、低評価は残った障害を探す入口です。両方を見ると、同じ方法が合う条件、合わない条件を考えられます。
まず一つの場面で検索し、URLと日付を残す
「写真整理」だけでは広すぎます。例えば「旅行 写真 家族 送る」「写真 整理 終わらない」のように、したい作業や止まった場面を含めて探します。これらは調査を始めるための検索語例で、検索数を確認したキーワードではありません。
気になる声が見つかったら、URL、ページ名、確認日、発言の前後を記録してください。「分かりづらかった」という一文だけ切り取ると、操作が難しかったのか、料金の説明なのか分からなくなります。
名前やプロフィールを集めるより、作業の条件を残すことが先です。アプリは何か、どの操作を試したか、何を望んでいたか。原文にない条件は「不明」と書けば、次に何を調べるか分かります。

原文の要旨と、自分の解釈を別の列へ置く
説明用の架空投稿Aを考えてみます。
旅行写真を家族に送りたい。でも昔の写真も見始めてしまい、整理が終わらない。
ここから確認できるのは、旅行写真を送りたいことと、昔の写真も見て作業が止まっていることです。「50代でスマホが苦手」「有料アプリに抵抗がある」とは書かれていません。
| 記録する列 | 架空投稿Aの記入例 |
|---|---|
| 原文の要旨 | 旅行写真を送りたいが、昔の写真も見て整理が終わらない |
| 確認できた現状 | 旅行写真を送る作業が終わっていない |
| 本人が望むこと | 家族へ旅行写真を送りたい |
| こちらの解釈 | 対象期間を広げすぎている可能性がある |
| まだ分からないこと | 共有操作を知っているか。容量不足など別の問題もあるか |
| 次の確認 | 同じ場面の別の声と、実際の操作条件を調べる |
解釈は必要です。材料を集めるだけでは、どんな記事を書くか決まりません。ただし、解釈を本人の発言へ混ぜると、想像した読者へ答える文章になってしまいます。
仮説を「事実」に変えてよいのは、裏づけを確かめたあとです。「対象期間を狭めれば解決する」は、まだ仮説です。共有方法が分からず止まっているなら、先に操作の説明が必要になります。別の原因だったら何が変わるかも、一緒に残しましょう。
同じ「写真整理」の三つの声を、一つに混ぜない
架空の声をさらに2つ加えます。
- A:旅行写真を送りたいが、昔の写真も見て終わらない。
- B:スマホの空き容量が足りず、新しい写真を撮れない。
- C:故障前に写真を別の場所へ保存したい。
どれも写真がテーマですが、目指す作業が違います。Aへ容量を減らす削除方法を勧めても、家族へ送る写真をまとめたい気持ちに答えられるとは限りません。Cは、整理より保存を先にしたい状況です。
今回の担当をAにするなら、「今月の旅行写真だけを選び、まとめるには?」が記事の疑問候補になります。Bの空き容量、Cのバックアップは、別の疑問として記録します。

3つの架空例から、どの悩みが多いかは分かりません。仮に公開投稿を10件読んでも、条件の違う10人とは限りません。実際の公開情報を調べたときは、同じ投稿の転載や、同じ人の連投を別の声として数えないようにします。同じ文章が2回出てきたら、別の声か転載かを確かめてください。集めた件数だけで市場全体の割合も断定できません。
競合が答えることと、自分が見せられる中身を照合する
読者の疑問が決まったら、同じ疑問に答える記事を読みます。題名に「簡単」とあるかだけでなく、対象の絞り方、操作例、失敗したときの戻り先まで確かめてください。
競合がすでに操作を画像で説明しているなら、「手順を紹介する」だけでは選ぶ理由が弱くなります。あなたが、対象を広げすぎた例と絞った例を同じ写真で見せられるなら、その比較を記事へ入れる案が考えられます。
ただし、実演できるか確認する前に「実演付き」と約束しないこと。調査で見つけた疑問、自分の素材、作れる中身を並べ、足りないものを集めます。記事がすでにあるなら、その記事が同じ疑問に答えているかを先に確かめましょう。同じ内容のページを増やすより、元の記事へ不足する実例を足す方が読み手を迷わせずに済みます。
「読者は何が欲しいか」と「自分は何を言いたいか」は、ずれることがあります。そのずれを本文を書く前に見つけるためのリサーチです。
調査表の空欄から、次の確認を一つ決める
配布する調査シートでは、記入ガイド、説明用の架空例、あなたが書き込む空欄を分けています。架空例のURL欄には実在の出典がありません。使うときは、あなたが実際に読んだ公開情報へ置き換えてください。
この記事の記入シートをダウンロードする(CSV・記入例付き)
ExcelやGoogleスプレッドシートで開いて使えます。記入例は説明用の架空例です。ご自身の情報へ置き換えてください。
まず、テーマを一つ選び、公開されている声を読みましょう。URLと要旨、あなたの解釈、まだ分からないことを別々に記録してください。空欄が残るのは失敗ではありません。次に調べることが見つかったということです。
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