オーディオブックのナレーションは、自分の声を録音して作れます。最初に、権利を確認した自分の原稿を「耳だけで分かる台本」へ直し、短い区間を録り、言い間違いと内容を照合してください。1冊すべてを録る前に、同じ条件で続きを作れるかを確かめます。
書いた文章なら分かるはずなのに、読み上げると「これ」「下の図」が続いて、何をすればよいのか分からない。声をきれいにする前に、ここで止まることがあります。あなたが録りたいのは、文字を音に変えただけのファイルでしょうか。聴いた人が内容を理解して使える1冊にしたいはずです。
原稿の直し方と試録の確認箇所が決まれば、自分の経験を、画面を見られない時間にも届けられます。最初は1本の試録で、台本と音を確かめましょう。
最初に、音声だけで伝わる内容を選ぶ
僕も自分の声で届ける音声作品を制作しています。声で知識を届けるときは、画面を見られない人にも意味が伝わるかが大事です。
僕は音声化の教材で、実演を見ないと分からない講座よりも、聴くだけで学べる内容の方が相性がよいと説明しています。画面で操作を見せる講座の音声を、そのまま抜くだけでは伝わらない部分が残るからです。
すでに自分で書いた原稿でも、出版契約や引用、画像、表紙の利用条件を確認します。他人の文章を使うなら、読み上げて配信できる範囲も確認してください。
ここからは、架空の短い原稿「会議の最後に担当を決める」を例にします。録音して公開した実音源ではなく、台本を直すための説明例です。
| 元の文章 | 耳だけで困るところ | 読み上げる台本の例 |
|---|---|---|
| 下の表の右欄へ記入します | 表が見えない | 会議の最後に、決まった仕事、担当者、期限の3つを確認します |
| これを全員で共有してください | 何を共有するか分からない | 決まった仕事、担当者、期限を、参加者が後で見返せる記録へ残してください |
| A案とB案は上図のとおりです | 比較する内容が分からない | A案は担当だけを決め、B案は担当と期限を決めます。期限が要る仕事では、B案のように両方を確認します |
ただ語句を省くだけでは、必要な説明まで抜けます。「下の表」を消すなら、表で何を伝えていたのかを文章へ戻してください。
具体的なボタンの位置を見せることが学習の中心なら、その区間を音声版に残すか、別の補助資料を用意するかを考えます。出版先が補助資料を扱えるかも、先に確認しましょう。

原稿と読み方をそろえてから、短く試す
録音中に言葉の読み方を毎回考えると、章ごとに名前や用語が変わってしまいます。作品名、人名、専門語、数字を先に確認し、台本へ読み方を添えます。
架空の台本なら、「担当者と期限」を毎回同じ意味で使い、章の最初と最後の文を決めます。読みにくい一文は、意味を変えない位置で分けてください。息が続くかだけでなく、聴く人が何を覚えておけばよいかも見ます。
最初の試録には、説明、数字、言いにくい言葉が含まれる区間を選びます。たとえば上の3文を1本に録れば、語句の統一と、比較の説明を確かめられます。冒頭、比較、最後の指示という3つの箇所を残し、あとで聞き直します。試す長さは作品に応じて決めてください。販売ページの試聴音源や、出版先へ提出するサンプルの指定とは別です。
自宅では、声を出す前に周りの音を確かめる
収録環境を毎回変えると、同じ人の声でも章と章で違って聞こえることがあります。使うマイク、口からの位置、部屋、時間帯、録音設定をメモし、同じ短文で聞き比べてください。
僕たちの録音教材では、担当講師のりんちゃが、自宅の環境音を洗い出し、止められる音は止め、止められない音が鳴る間は発話を待つ考え方を伝えています。
| 音や状態 | 試録で確かめること |
|---|---|
| エアコン、換気扇など | 必要な安全や室温を保ちつつ、位置や運転条件で録音へ入る音が変わるか |
| 外の車や放送 | 音がある間に話さず、静かになってから同じ文を読む |
| 机やケーブルの接触 | 手や机の動きが音へ入らない置き方か |
| 声の大きな部分 | 入力が割れず、普通の部分も聞き取れるか |
音量が小さいからと、録音後に大きくすればすべて直るとは限りません。声と一緒に雑音も大きくなります。まずは元の録音を聞き、声が欠ける、割れる、周囲の音で聞き取れない場合は、環境や設定を変えて録り直します。
機材の購入前に、今使えるものの試録で問題を切り分けましょう。反響の対策を詳しく確かめたい方は、講座の録音環境と音質を整える方法も参考にしてください。
噛んだ場所は印を残し、同じ意味の文から言い直す
言い間違えるたびに1章全部を最初から録ると、作業がなかなか進みません。編集でカットする前提なら、間違えた場所の後に間を置き、正しい文を言い直して続ける方法があります。
録音教材でも、りんちゃは、噛んだ単語を言い直して通しで録り、編集しやすい間を作る方法を説明しています。あなたの台本では、単語だけを差し替えると音のつながりが不自然なら、意味の通る短い文から言い直してください。
架空例なら、次のように記録します。
| 状態 | 録音中にすること | 編集後に確かめること |
|---|---|---|
| 「期限」を「期間」と読んだ | 少し間を置き、「担当者と期限を確認します」から言い直す | 間違いと正しい文が両方残っていないか |
| 言い直し直後に外の音が入った | 音が止まってから同じ文を読む | 正しい文の途中に雑音が残らないか |
| 次の文まで進んだ後で読み飛ばしに気づいた | 戻る文と位置をメモして録り足す | 文の順番と意味が台本へ戻ったか |
間をどれだけ残すかは、読み方と編集方法に合わせて試します。一定の秒数を空ければ、すべての出版先の音質審査を通る、という規定ではありません。
原音を残し、編集用の複製で直してください。カットした箇所の前後を聞き、息や文頭が欠けたら元に戻します。

台本を見ながら1回、画面を見ずにもう1回聞く
編集したら、台本を見ながら冒頭から末尾まで聞きます。作品名、章名、数字、否定の言葉、読み飛ばしを確認してください。「必要ない」の「ない」が欠けたら、意味が逆になります。
もう1回は台本を閉じ、耳だけで聞きます。1本の音声を2回、違う目的で確認する方法です。さっきの架空例なら、会議の最後に何を3つ確認するのか、A案とB案の違いが分かるかを確かめます。自分では書いた内容を覚えているので、協力を得られるなら、初めて聞く人にも内容が伝わるか見てもらいましょう。
| 確認の段階 | 残す記録 |
|---|---|
| 台本との照合 | 欠落、重複、読み間違いと修正位置 |
| 耳だけの確認 | 何を指すか分からなかった言葉、長くて追えなかった説明 |
| 章を続けて再生 | 音量や声の印象の違い、順番、冒頭・末尾 |
| 配信先へ渡す準備 | 現在の指定形式、音量などの要件、作品名と版 |
自分が聞けたことと、配信先の要件に合ったことは分けます。MP3などの形式や音量の数値は、契約先から受け取った現行仕様へ合わせてください。録音・編集ソフトの操作が終わっただけで、販売可能と決めないようにしましょう。
あなたの短い原稿を、試録シートへ書こう
この記事の記入シートをダウンロードする(CSV・記入例付き)
ExcelやGoogleスプレッドシートで開いて使えます。記入例は説明用の架空例です。ご自身の情報へ置き換えてください。
シートは4列です。「記入ガイド」と「説明用の架空例・状態」を見て、空欄の「あなたの記入」へ原稿の変更前後、読み方、収録条件、言い直し位置、再生確認を記入してください。実際の録音をまだしていなければ、試録結果は「未実施」です。
最初は、自分の原稿から画面や図を指している1段落を選びましょう。その情報を耳だけで理解できる文へ直し、短く録って聞いてみてください。読み上げられたかだけでなく、聴いた人が何をできるようになるかで内容を確認します。
audiobook.jpを配信先に考えている方は、現在の個人出版の受付と準備も確認してください。音源が完成していても、受付と契約が自動的に整うわけではありません。
あなたの本を読む人だけでなく、移動中に聴く人にも学んでもらう。短い試録で台本と音を確かめ、次の章でも使える作り方を残しましょう。
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あなたの経験を、講座と本で届けるには
今ある知識や経験を、講座や本にして必要な人へ届けたい方へ。僕の著書『マーケティング不要の次世代型コンテンツビジネス』で、何を商品にするか、AIとどう分担するか、学びたい人が集まる場所でどう届けるかをお伝えしています。

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