エピソードトークは、伝える相手と主張を決め、その判断が変わった出来事を選び、聞き手が追える順番へ組むと作れます。面白かったことを全部話すより、「この話で何を持ち帰ってほしいか」を先に決めてください。
話し終えたのに、相手から「それで、何が言いたかったの?」と聞かれる。出来事は覚えているのに、話すと寄り道が増える。あなたが講座やプレゼンで伝えたいのは、体験の量より、その経験から得た判断のはずです。短い話にまとまれば、説明だけでは伝わりにくい教訓を、具体的な出来事と一緒に届けられます。
ADEPTで、誰に何を伝える話かを決める
僕がストーリーテリングを学ぼうとしたとき、映画や神話の構成を、そのまま短いエピソードへ使うことには難しさを感じました。著書のまえがきでも、日常や仕事で使える短い物語を求めた経緯を書いています。
そのため、僕はストーリーテリングの講座で、ADEPTという5つの工程を説明しています。主張、方向、エピソード、筋、伝え方の順で作る方法です。公開している音声作品でも、それぞれを扱っています。
| 工程 | 決めること | 自分への問い |
|---|---|---|
| A:主張 | 持ち帰ってほしい判断 | 誰に何を伝えたいか |
| D:方向 | 前後の考えの変化 | 何を考えていて、何が変わったか |
| E:エピソード | 変化を表す出来事 | その判断につながる経験はあるか |
| P:筋 | 聞き手が追える順番 | 目的、障害、きっかけ、教訓が分かるか |
| T:伝え方 | 言葉と話し方 | 声で聞いても状況が伝わるか |
すべての話で笑いを取る必要はありません。講座で「まず一度やってみよう」と伝えたいなら、その判断につながる経験を選びます。雑談で笑ってもらう目的とは、選ぶ話も結びも変わります。
出来事メモから、主張に合う話を選ぶ
次は、話の組み立てを練習するための架空設定です。僕や受講者の実話ではありません。
初めての社内勉強会。説明を増やせば伝わると考えて、資料を作った。練習用紙を配ったが、記入が進まなかった。そこで一問を参加者と一緒に解いた。その後、参加者は次の一問を書き始めた。会場の飾りも準備した。
この出来事から、「説明を増やす前に、一つの練習を一緒に進める」という主張を選びます。相手は、講義の説明を増やすほど内容が伝わると考えている人です。
候補に別の「資料の色を統一した」という出来事があっても、それだけでは、練習を入れる主張につながりません。実話でも、今回の主張に合わなければ別の話で使います。
5つの要素をそろえ、起承転結へ並べる
| 要素 | 同じ架空例での記入 |
|---|---|
| 主人公 | 初めて勉強会を開く担当者 |
| 目的 | 参加者が練習問題を書けるようにする |
| 障害 | 説明は増えたが、用紙への記入が進まない |
| きっかけ | 一問を一緒に解く |
| 教訓 | 説明だけを増やさず、実践の最初を一緒に進める |
この5つを起承転結へ置くと、状況→うまくいかないこと→変えたこと→学んだ判断、という流れになります。途中に障害があるから、最後の教訓が単なる標語で終わりません。

時系列の報告を、変化が分かる短い話へ直す
最初の原稿を、こう書いたとします。
勉強会を開きました。資料と飾りを準備して、説明して、用紙を配って、一問解いて、そのあと参加者が書きました。
起きた順番は分かります。でも、なぜ一問を一緒に解いたのかが抜けています。同じ設定の範囲で、考えと障害を戻します。
初めて勉強会を開いたとき、説明を増やせば伝わると思い、資料を用意しました。でも、練習用紙を渡すと記入が進みません。そこで一問だけ一緒に解きました。その後、参加者は次の一問を書き始めました。この出来事から、説明を足す前に、最初の実践を一緒に進めようと考えました。
これは説明用の完成例で、実際の開催結果ではありません。「全員が感動した」「理解度が2倍になった」という反応や効果は、元の設定にないので足していません。
| 直した箇所 | 理由 |
|---|---|
| 会場の飾りを外す | 今回の考えの変化につながらない |
| 最初の考えを入れる | 説明を増やした理由が分かる |
| 記入が止まった場面を残す | 変更が必要になった事情が分かる |
| 一緒に解いた後と教訓を結ぶ | 何を次に生かすかが残る |
実話を使うときは、出来事と解釈を分ける
あなた自身の経験へ置き換えるなら、記録や記憶で確認できる出来事と、後で考えた教訓を分けましょう。覚えていない会話を、かぎ括弧の名台詞として作る必要はありません。
「あの人は不安だったはず」と考えたことと、本人が不安と話したことも別です。相手の反応を見て自分がどう受け止めたか、と書けば、他人の感情を断定せずに自分の判断を伝えられます。

他人の失敗や事情を使う場合は、公開してよいかを確認します。特定される情報を消しても、相手が望まない話なら、別の経験を選びましょう。
声に出して、抜けた説明と寄り道を直す
一度読み、聞き手が「誰が、何をしようとして、何に困ったか」を追えるか確かめてください。もう1回は、最後の一文が最初に決めた主張へつながっているかを見ます。2回の確認は、長さの競争にするためではありません。
途中で人名や場所の説明ばかり増えるなら、主張に必要な内容かを見直します。逆に、きっかけを削って変化が突然に見えるなら、その出来事を戻します。短くするために意味まで抜かないことです。
あなたの出来事を、一つの話へ書いてみよう
この記事の記入シートをダウンロードする(CSV・記入例付き)
ExcelやGoogleスプレッドシートで開いて使えます。記入例は説明用の架空例です。ご自身の情報へ置き換えてください。
記入CSVは4列です。ガイドと説明用の架空例を見て、空欄へ、自分の相手、主張、出来事、障害、きっかけ、完成原稿、確認結果を記入してください。架空例を自分の体験として話さないでください。
まずは最近の経験を一つ選び、そこから誰へ何を伝えられるかを一文にしましょう。大きな成功でなくても構いません。判断が変わった出来事を確かめて書けば、あなたが経験から学んだことを、講座やプレゼンで使える話にできます。
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あなたの経験を、講座と本で届けるには
今ある知識や経験を、講座や本にして必要な人へ届けたい方へ。僕の著書『マーケティング不要の次世代型コンテンツビジネス』で、何を商品にするか、AIとどう分担するか、学びたい人が集まる場所でどう届けるかをお伝えしています。

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