「神話の法則」だけがストーリーテリングではありません。
僕たちは映画監督になりたいわけでも、神話を研究する学者になりわけでもありません。
ただ人の心を動かす技術として、ストーリーテリングを使いたいのです。
そこで本記事では、90秒~5分の短い物語で相手の心を震わせるエピソードトークの技法をお伝えします。
WEBマーケターとして、セールスコピーライターとして活動してきた僕の知見をもとに、相手の心を動かす物語の作り方を教えます。
90秒~5分で相手の心を動かす!実践テンプレート
映画のような長編作品やおとぎ話ではなく、エピソードトークのような小さい物語にフォーカスして解説していきます。
誰でも今日からすぐにストーリーテリングを身につけられる、実践的な方法をお伝えします。
ストーリーテリングとは?相手の信念を変える”最強の説得ツール”
ストーリーテリングとは、「ストーリーという乗り物を使ってメッセージを相手に届けること」です。
第三者にメッセージを伝えるとき、どんな乗り物に乗せるかが重要になります。
例えば、僕が経験したある店舗での出来事をお話ししましょう。
倹約家だった彼女が突然、「40万円のシーツを買いたい」と言い出したのです。
普段はスーパーでの買い物でもシビアな彼女が、高級な買い物をしたいと言い出し、さらには「良いものだから、あなたも一緒に買わないか?」とまで提案してきました。
シーツ屋の店員さんは、次々とストーリーを展開していきます:
- 高齢の同僚が生き生きとしているのは、全員がこのムートンシーツを使っているから
- 自分も愛用していて、最初は懐疑的だった旦那も今では虜に
- 醤油を垂らしても大丈夫、水で洗い流せば綺麗になる(実演付き)
店員さんのストーリーを聞くうちに、もともとは興味がなかった僕も「40万円でも安いかもしれない」と考え始めたのです。
なぜこれほどまでに効果があったのでしょうか?それは以下の理由からです:
1.論理的説得よりも効果的
- 単に「最高級素材使用」と説明されても心は動きません
- しかし実際の体験談を聞くと、自然と価値を見出せます
2.相手が自ら答えにたどり着く
- 説得や押し付けではなく、聞き手が自然と結論に導かれます
- 自分で見出した答えには深い納得が伴います
マーケティングの世界では「人は感情で物事を決定し、理性でその決定を正当化する」と言われています。
これは様々な研究によって証明されている説です。
ストーリーテリングは、まさにこの感情に働きかけ、相手の価値観を自然と変化させる力を持っているのです。
なぜ90秒~5分の「小さな物語」が効果的なのか
インターネットでストーリーテリングを検索すると、必ずと言っていいほど『神話の法則』がヒットします。
これは神話学者ジョーゼフ・キャンベルが世界中の神話を研究して見出した、ストーリーの黄金パターンです。
12の段階に沿って物語を語ることで、無意識に人を引き付け、心を動かします。
実際に映画「スターウォーズ」はそっくりそのまま神話の法則で構成され、大ヒットを記録しました。
しかし、この『神話の法則』には大きな問題があります。
それは「使い勝手が悪い」ということです。
僕たちは映画監督になりたいわけでも、神話を研究する学者になりたいわけでもありません。
ただ人の心を動かす技術として、ストーリーテリングを使いたいのです。
だからこそ必要なのが、90秒~5分程度の「小さな物語」です。
エピソードトークのような短い物語なら:
1.すぐに実践できる
- 長い準備時間が不要
- 日常的な場面で使える
2.相手が理解しやすい
- メッセージが明確に伝わる
- 集中力が持続する
3.効果が確実
- 感情に直接働きかけられる
- 具体的な行動変化を促せる
僕自身、WEBマーケターとしてYoutubeやWEBセミナーの企画設計を担当していますが、常に全体を1つのストーリーとして捉え、視聴者(参加者)の行動を促すことを意識しています。
そして、このような短いストーリーテリングを活用した企画設計で、3ヶ月間で5,800万ほどの売上を記録しました。
「大きな物語」と「小さな物語」の違いと使い分け
ストーリーテリングを学ぶ上で、もう1つ前提として押さえておいてほしいことがあります。
それが「大きな物語」と「小さな物語」の違いです。
■ 大きな物語
- 映画や神話、おとぎ話などの長編作品
- 神話の法則やストーリーブランド・フレームワークが有効
- 映画監督を目指す人などに必要な技法
- より大きなインパクトと影響力を持つ
■ 小さな物語
- 90秒~5分程度の短いストーリー
- エピソードトークや小話のような形式
- プレゼンやビジネス会話で活用可能
- 日常的に実践しやすい
もちろん「大きな物語」と「小さな物語」のどちらも大切です。
「大きな物語」の方が確かにインパクトを与えることができ、影響力も大きいでしょう。
しかし、本講座が注目するのは「小さな物語」です。
なぜなら:
1.実践的に使える
- ビジネスの現場ですぐに活用可能
- 準備時間が少なくて済む
2.目的に十分
- 相手の価値観を変えるのに適切な長さ
- 必要なメッセージを過不足なく伝えられる
3.習得しやすい
- 技法をマスターしやすい
- 繰り返し練習できる
仕事や日常生活の中で相手の価値観を変化させるという目的には、「小さな物語」で十分なのです。
「小さな物語」作成の3ステップ
効果的なストーリーテリングには、明確な構成方法が必要です。
本記事では、僕がWEBマーケターとして体系化してきた「ADEPTフォーミュラ」を基に、ストーリーテリングの具体的な作り方をお伝えします。
Step1: ADEPTフォーミュラの全体像
ADEPTフォーミュラとは、ストーリーテリングを5つのステップで組み立てる方法です:
A : Assertion(主張を決める)
- 誰に、何を伝えたいのかを明確にする
- 具体的な立場から主観的な内容を
- 主張は短く、説明は丁寧に
例:「睡眠は大事です」という一般的な主張ではなく、「あなたも僕のように睡眠時間を削って失敗する前に、今から睡眠を大切にしましょう」という具体的な主張
D : Direction(方向性を決める)
- 主張の逆の立場からスタート
- 2つの対比する状態を設定
- 価値観の変化を示す
例:「睡眠なんて無駄だ」という考えから、「睡眠は大切だ」という考えへの変化
E : Episode(エピソードを探す)
- 方向性に合った具体的な体験を選ぶ
- できるだけ個人的な経験を使用
- 価値観が変わったきっかけを含める
例:仕事で倒れて入院し、十分な睡眠を取るようになって成果が上がった経験
P : Plot(プロットを組み立てる)
- 起承転結の流れを作る
- 特に「承」の部分を丁寧に描写
- 全体を90秒~5分に収める
T : Telling(伝え方を練る)
- 具体的な描写を心がける
- 感情の起伏を意識する
- 教訓を簡潔に伝える
Step2: ストーリー構築の3つの黄金ルール
効果的なストーリーを作るためには、いくつかの重要な原則を理解する必要があります。
ここでは、実践で得た3つの黄金ルールをお伝えします。
内的・外的ストーリーの組み立て方
ストーリーテリングには2つの側面があります。外的な出来事と内的な旅です。
例えば童話「大きなカブ」を見てみましょう:
外的なストーリー(表の物語):
- おじいさんがカブを植える
- 大きく育ったカブを抜こうとするが、びくともしない
- おばあさん、孫、動物たちに手伝ってもらう
- みんなで力を合わせて抜くことができた
内的なストーリー(裏の物語):
- 最初は1人でできると思っていた
- 1人では達成できないことを知る
- 助けを求めることを決意する
- チームプレイの大切さに気づく
この2つのストーリーは常に同時進行で進んでいき、最後に「協力することの価値」という教訓として結実します。
個人的なエピソードを活かした展開術
ストーリーテリングでは、なるべく個人的なエピソードを語るべきです。
なぜなら:
1.オリジナリティの確保
- 他の人が同じ話を使えない
- 詳細な描写が可能
2.説得力の向上
- 実体験に基づく具体的な感情表現
- リアルな状況説明
3.信頼関係の構築
- 話し手の人間性が伝わる
- 共感を得やすい
5つの要素を組み合わせた構成法
魅力的なストーリーには、以下の5つの要素が必要です:
1.主人公
- はっきりとした人物像
- 感情を持った存在
2.目的
- 達成したいこと
- 行動の理由
3.障害
- 乗り越えるべき壁
- 内的・外的な困難
4.ターニングポイント
- 価値観が変わる瞬間
- 重要な気づき
5.教訓
- 学んだこと
- これからの行動指針
これらの要素を組み合わせることで、ストーリーに深みが生まれます。
Step3: 魅力的な語り方の3つのポイント
せっかく良いストーリーを組み立てても、伝え方が適切でなければ効果は半減します。
ここでは、相手の心により深く届けるための3つのポイントをお伝えします。
印象的なオープニングの作り方
YouTubeやウェブセミナーの離脱率を調査すると、多くの場合、最初の部分で大きく視聴率が下がることがわかります。そのため、オープニングの作り方が極めて重要です。
効果的なオープニングの例:
「40万円のシーツを買おうと思います」 突然、倹約家の彼女がそう言い出したのです。
「睡眠なんて無駄だと思っていました。会社で倒れるまでは…」
重要なのは:
- 冒頭で興味を引く
- 短く簡潔に伝える
- 意外性や違和感を含める
感情を動かすピークエンドの活用法
人は物語の全てを覚えているわけではありません。
覚えているのは「最も感情が動いた瞬間(ピーク)」と「最後の印象(エンド)」だけです。
ピークを作るポイント:
- 価値観が大きく変わる瞬間を描く
- 具体的な感情表現を使う
- 変化の前後を対比させる
エンドの作り方:
- 教訓を簡潔に示す
- 具体的な行動指針を示す
- 希望を持てるメッセージで締める
共感を生む実体験の伝え方
実体験を効果的に伝えるためのポイント:
1.友達に話すような口調で
- 堅苦しい表現は避ける
- 自然な会話の流れを意識する
- 専門用語は最小限に
2.具体的な描写を心がける
- 状況説明は詳しく
- 感情の機微を丁寧に
- 数字や固有名詞を適切に
3.メッセージは最後に簡潔に
- 押しつけがましくない
- 実践可能な内容
- 共感できる形で
明日から使える!シーン別ストーリー構成例
ここまで学んだストーリーテリングの手法を、具体的な例を通して見ていきましょう。
これらの例は、僕が実際に使用し、効果を実感したものです。
気づきを与えるストーリー:「自分で行動しなかった人の末路」
高校3年生の秋まで、僕は志望校など考えることもなく、ただ漠然と勉強をしていました。文理の選択も自分の意思ではなく、仲の良い友達に付いていっただけ。友達の付き添いで1度だけ参加したオープンキャンパスも、結局自分の興味のある分野の大学ではありませんでした。
しかし実際には、高校3年生の春には志望校についての話題が飛び交っており、自分が何もしていないことに気づかされました。「自分が何になりたいかもわからない」「何をしたら良いかもわからない」という状態に陥り、夏休み前には親友の進路が決まり、さらに焦りが増していきました。
転機となったのは、部活に顔を出してくれた先輩たちとの出会いです。最初は黙って話を聞いていた僕でしたが、「これではだめだ」と思い立ち、まだ進路すら決まっていないことを打ち明けました。
すると、先輩たちが自分の通っている大学について、それぞれ紹介してくれたのです。その中で自分の興味が湧く大学が見つかり、今度は自分1人でオープンキャンパスに参加。初めて自分の思いと向き合う機会を得ることができました。
この経験から僕は、「自分で動くことの大切さ」を学びました。
共感を生むストーリー:「言葉の持つ力」
同棲していた彼女とのケンカがきっかけでした。几帳面な彼女が「もっとちゃんと掃除してよ!」と言ったのに対し、僕は「そんなことで」と軽く受け流してしまったのです。
僕にとっては「そんなこと」でも、彼女にとっては重要な問題でした。結果として彼女を泣かせてしまい、同棲開始からわずか1ヶ月で別れの危機に直面します。
心を入れ替えて必死に家事をこなし、トイレやお風呂をピカピカに掃除し、不慣れな料理も頑張りました。そして彼女の機嫌が直ってきたタイミングで謝罪をしたとき、彼女はこう言いました。
「あなたの言葉はナイフのように尖っていて、人を傷つける」
この言葉が僕の心に深く刺さり、それ以来、意識して言葉を選ぶようになりました。
価値観を変えるストーリー:「本嫌いが読書家になるまで」
小学2年生のとき、国語のテストで0点を取りました。サボったわけでも、ふざけたわけでもありません。真面目に取り組んだ結果の0点でした。
その後、小学4年生から進学塾に通い始めましたが、最下位クラスの常連。本も読まず、典型的な「勉強嫌い、本嫌い」の子供でした。
転機は大学3年生の時。「お金を稼がなきゃ」という一心でアフィリエイトを始めました。しかし、そこで大きな壁にぶつかります。アフィリエイトには3,000~5,000文字の記事を書く必要があったのです。
400字の読書感想文ですら苦痛だった僕には途方もない量でしたが、不思議と挫折はしませんでした。なぜなら「稼ぎたい」という明確な目的があったからです。
「どうやったらアフィリエイトで稼げるようになるのか?」という疑問を解決するために、自然と本を読み始め、気づけば毎月10冊以上のペースで読書をするようになっていました。
いまでは実際にストーリーテリングを活用し、企画設計したYouTubeとWebセミナーで、3か月間で5,800万ほどの売上を記録しています。
これらの例からわかるように、ストーリーテリングは相手の心を動かし、行動を変える強力なツールとなります。
ぜひあなたも、自分だけの「小さな物語」を作ってみてください。
あなたも今日からストーリーテラーに
この講座で学んだように、ストーリーテリングは特別な才能ではありません。
90秒から5分という短い時間で、相手の心を動かし、価値観を変えることができる実践的なスキルなのです。
技術の発展により、AIの進歩が目覚ましい今の時代。
しかし、実際に体験したことをストーリーとして語ることは、人間にしかできない価値ある行為です。AIがどれだけ優れた文章を書けたとしても、実体験を伴わない言葉に重みはありません。
あなたがこれまで生きてきた人生には、必ず誰かの心を動かせるストーリーが眠っています。
それは、あなたにしか語れない、オリジナリティ溢れる「小さな物語」です。
本記事で学んだADEPTフォーミュラを使えば、その体験を効果的なストーリーテリングへと変換できます。
ビジネスの場面でも、日常生活でも、相手の心により深く響くコミュニケーションが可能になるはずです。
今すぐにでも、あなただけの「小さな物語」作りを始めてみませんか?
きっと、想像以上の反響が得られるはずです。
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